見たい作品がいつでも見れるなら、ぜひともネットとメディアを融合していただきたい!
10年ほど前、出版業界に入った。
当時は、「欲しい本が本屋にない」との言葉をよく聞いた。
単行本が以前に比べると気軽に出版されるようになったからなのだろうか、
本屋に行くと、とにかく数多くの新刊が所狭しと並んでいた。
しかし、肝心の「欲しい本」がないのである。
お手軽単行本が書店のスペースを占めてしまう、
出版サイクルを早めてしまうなどにより
「あの本良さそうだ」と思いながらも買わずにいると
書店に行っても見つからない、問い合わせても絶版だ
なんてことが、多くなってしまったのだ。
「欲しい本が本屋にない」を解決するには、コツコツと足で探すしかなかった。
つまり、古本屋めぐりをするわけである。
その状況を変えてくれたのが、ネットの書店だった。
本屋になくても、絶版にさえなっていなければ、買える。
絶版の本だって、「うちにならありますよ」と古本屋めぐりをしなくても
ありかを教えてくれる。
これはかなり画期的だ。
最近、「ネットとメディアの融合」という言葉をよく聞く。
TVにしても映画にしても、「見たいのに見れない」作品が数多くある。
例えばドキュメンタリーがその一例だ。
ドキュメンタリーには、膨大な気の遠くなるような時間をかけて制作されている作品が数多くある。
しかしTVでは、仮に再放送されることがあったとしても、いつくるかわからないその日をただひたすら待ち続けるしかないし、その日を知らずに過ごしてしまうかもしれないという、その作品が見れるか見れないかは偶然に委ねるしかないような状況なのである。
ドキュメンタリー監督・森達也氏のTV時代の作品を見たい
と思っても、見られない。
プロジェクトXをまとめてみたいと思っても、ビデオ化されている作品やNHKアーカイブス(過去の番組の図書館のようなもの)に足を運ばないと見られない(しかも見れたとしても、一部だけ)。
ドキュメンタリー映画も同じような状況で、
特集上映の予定をこまめにチェックしていないと
見たい作品が見られないのだ。
(山形まで行けば、いつでも見れるかもしれないが)
これらの志向は、マス向けではないかもしれない。
一部の人間しか、「ドキュメンタリー見たいよぉ」と思っていないのかもしれない。
しかし、「手軽に見れるなら、見たい」と思っている人は確実に存在する。
ネットの果たす役割は、TVのようにマスにターゲットをあわせることではなく、
少数派の欲望を充足させる機会を増やすことにあるような気がしている。
少数派の数が積み重なれば、マスになる。
また、機会をつくることにより、それぞれの少数派の母数が増えるかもしれない。
「お、こんないいものがあったんだ」を知る機会が誰にでも開かれるからである。
映像コンテンツは、膨大な時間、人足、人間同士のドタバタをかけてつくられている。
せっかくそれだけ大変な思いをしてつくったのだから、
ぜひそれを目にする機会を、増やしてほしい。
●観たい観たいと思いつつ、最近見逃している作品たち
・「草とり草紙」……ドキュメンタリー映画。小川プロの三里塚作品の助監督を務めた福田克彦監督が、成田空港第二期工事予定地に住む80代のおばあちゃんの日々を記録した。このおばあちゃん、すっかり曲がった腰で毎日畑に出る。ときに、土を食べて味をみる。家はボロボロだ、子どもたちも来ない。それでもなぜこのおばあちゃんが、この地を離れない理由がずしりと伝わってくるような作品。←細部はうろ覚えだが、「もう一度みたい」との強烈な思いだけは残っている。
・「職業欄はエスパー」……TV作品。森達也監督の同名の本を読み、ぜひ見たくなった。秋山眞人、堤祐司、清田益章の3人の超能力者を撮影する森氏は、長い時間をかけて彼らの中に少しずつ入っていく。その氏が彼らと接する中で、超能力と思える現象にたびたび遭遇しつつも、ドキュメンタリーの作り手として「信じるのか」「信じないのか」の間で揺れ続ける様をも表出させるこの本を読み、ぜひTV作品も見てみたくなった。
・「三里塚・第二砦の人々」……ドキュメンタリー映画。小川伸介作品。成田闘争=学生運動みたいなイメージしか持たなかった阿呆な私であるが、この作品を見て、成田闘争とは普通の日常を送る人たちの間に突然沸き起こった事件だったことに気付かされた。簡単に言えば、長年住み慣れた我が家なのに、お上から突然「空港になるから、どいて」と言われ、「気に入ってるんだから、どきたくない」と立ち退きに応じない図なわけなのだが、お上が「立ち退きたくない」と言っている人たちをどんどん切り崩していくのである。金で切り崩すこともあれば、逮捕という形で切り崩すこともある。この逮捕されるのは、それまで農業を営んでいた、フツーの悪いことなんてしてない人たちなのだ。そんなお上に、フツーの人たちが闘いを挑む。婦人部(おばちゃん軍団)は、警察(だったかなあ?)が村の道(といっても舗装されてないが)を通るのを阻止すべく、突然、道端に座り込んで、やかんを回しながらお茶を飲み、ぺちゃくちゃしゃべりだす。強制連行される家の前に並んだ若い警官に「あんたたち、こんな仕事をしてて恥ずかしくないのか」と説教をしだす。この作品の中で最大の戦線は、村の人たちで手作りで築いた砦である。砦を守るべく打ちこんだ木柱に自分の子どもを抱えて自らを鎖で縛りつけ人柱となる女性。そして叫ぶ「しょっぴくなら、親子ともども殺してみろ」。たとえるなら、うちの田舎のおばあちゃんが若い頃、突然、闘士となり戦っている図なのだ。最後にはこのおばちゃん軍団が神々しく見える逸品だ。
(三里塚作品は、3作観たが、6作あることを最近知った。しかし、なかなか観ることができないでいる……)
・ペーパーヘッズ ドキュメンタリー映画。スロヴァキア/1996。6、7年くらい前?に山形で観た。おぼろげな映像イメージしか覚えてないのだが、「面白かった!」ということだけは記憶に深く刻まれている作品。観られる環境にあればもう一度観たいと思う作品。
(編集・中村)
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